穀物繊維で糖尿病の発症リスク低下
アンブレラ・レビューでエビデンス「高い」と評価

【背景】
食事因子が2型糖尿病の発症に与える影響について、多数の報告が出ているものの関連の強さや妥当性を包括的に検証したものはなかった。本研究では、メタ解析を行ったシステマティック・レビューの結果をまとめて解析するアンブレラ・レビューによって、既存のエビデンスを評価することを目的とした。

【方法】
PubMed、Web of Science、およびEmbaseを2018年8月まで検索し、2型糖尿病の発症リスクと食生活や食事の質、食品群、食品、飲料、アルコール飲料、主要栄養素、微量栄養素との関連についての観察研究をメタ解析した報告を選択。

エビデンスの質はNutriGrade の修正版を使用して評価。各種バイアスのリスク、見積もりの精度、異質性(定量的に統合できるか)、直接性(例:研究集団または介入に違いがあったかどうか)、効果量などをスコア化し、エビデンスの質を「高い」「中程度」「低い」「大変低い」に分けた。

【結果】
最終的に153の統計を含む53のメタ解析を選択した。統計の内訳は食生活や食事の質(n = 12)、食品群および食品(n = 56)、飲料(n = 10)、アルコール飲料(n = 12)、主要栄養素(n = 32)、微量栄養素(n = 31)だった。

食事因子と2型糖尿病の発症リスクとの関連およびエビデンスの質について、主要な項目を下表に示す。

食事因子と2型糖尿病の発症リスクとの関連およびエビデンスの質

2型糖尿病の発症に関わるエビデンスの質が高かった食品は4つ。リスクを下げる食品は全粒穀物のみで、全粒穀物の摂取を1日に30g増やすごとにリスクは13%下がった。リスクを上げる食品は3つで、赤身肉、加工肉、ベーコンだった。それぞれ1日に100g、50g、2切れ増やすごとに17%、37%、107%リスクが上がった。

飲料では適度な飲酒がリスクを25%下げた。加糖飲料は1日1杯増えるごとにリスクが26%上がった。

食品成分で分析するとエビデンスの質が高かったのは1つのみで穀物の食物繊維(穀物繊維)だった。一方、食物繊維の総摂取量や野菜や果物の食物繊維に関しては、エビデンスの質は「中程度」だった。

【考察と結論】
全粒穀物および穀物繊維は2型糖尿病の発症リスクを下げるという質の高いエビデンスが示された。全粒穀物の摂取量を増やす、食物繊維の摂取量を増やす、GI(グライセミック・インデックス)が高い食品の摂取を控えるといった推奨事項は2型糖尿病予防のための各種ガイドラインにも示されており、今回の結果はこれに一致している。

【研究機関】
ハインリッヒハイネ大学(ドイツ)、ドイツ糖尿病研究センターほか

【大麦ラボ代表:青江誠一郎のコメント】

アンブレラ・レビューは、複数のメタ解析をさらに統合して解析したもの。これまでに、いくつかのメタ解析により、穀物、野菜、果物の食物繊維の中では、穀物の食物繊維のみが2型糖尿病のリスク低減に有効とされてきたが、今回のアンブレラ・レビューによって確定的になった。穀物の食物繊維源として、全粒小麦、玄米、大麦、ライ麦、オート麦などが挙げられるが、アラビノキシラン(前者2つに豊富)とβ-グルカン(後者3つに豊富)を分類した質の評価が今後望まれる。

Role of diet in type 2 diabetes incidence: umbrella review of meta-analyses of prospective observational studies
BMJ 365, l2368, 2019

2020年4月27日掲載